はじめに:研究の経緯

平成12年に「住宅の品質確保促進等に関する法律」(品確法)が施工され、瑕疵担保責任10年の義務付けや、住宅性能表示制度もスタートした。
それから、建築基準法や公庫仕様書の改正など、住宅に関わる法制度はめまぐるしく変化した。
また、それ以前に次世代省エネ基準が設けられ、今後の日本の住宅は、高断熱・高気密化する方針がうちだされた。
この基準が住宅性能表示制度の温熱環境に関する項目で最高等級に位置づけられており、現在、ハウスメーカーや工務店は中小問わずこうした時代の流れに対応していかなければならない状況にある。

様々な住宅の工法がある中で、日本の住宅の中心は軸組工法による在来木造住宅である。
以前の在来木造住宅は、断熱材の厚さを増やしても熱的性能が一向に上がらなかったが、外壁の上下端に気流止めとしてあらかじめ気密シートを張る工法である新在来木造工法によって性能の高いものとなった。

次世代省エネ基準において、在来木造の充填断熱工法はこの工法を前提したものとなっているが、施工難易度が高いなど、まだまだ改良の余地が残されていると思われる。
今現在、次世代省エネ基準、そして更にワンランクUPの基準を見据えて住宅性性能の向上と、施工の簡単な工法の開発が求められている。

新在来木造工法の登場により住宅の断熱性能は飛躍的に向上した。
しかし、新在来工法は先張りシートを張ることで建て方の順序が変わるため、大工は施工手順をしっかり把握していなくてはならない。
また、気密層であるポリエチレンシートは欠損が生じないよう、最新の注意が必要とするなど施工技術を習得するのがあまり容易ではない。
北海道や東北のような寒い地域では、高断熱の必要性からいち早くこの工法が取り入れられてきたが、本州の温暖地では耳付きグラスウール(あらかじめ外壁内側にポリエチレンフィルムのついたもの)を使用できるため、あらたに外壁内側にポリエチレンシートを張るこの工法は、面倒に感じることもある。

本研究の目的は、この新在来木造工法をあらためて見つめ直し、上記のような問題点を少しでも解消することにある。
具体的には、まず第一に気密層にポリエチレンシートや先張りシートを用いた従来の新在来工法の改良である。

第二には、阪神大震災以来、床や壁に構造用面材が利用されるようになったが、この面材を気密層とする新しい新在来木造工法の提案である。

この二点を中心に、各部位ごとに断熱・気密施工の方法を表し、解説、検討していき、これからこの工法がどうあるべきかを考えることとする。
なお、新在来木造開発の目的は高断熱化にあるので、これ以降で取り上げる断熱仕様は、現在の断熱性能の基準で最高水準にある次世代省エネ基準をクリアするものとする。